産業観光ガイド“ひたりずむの会“で現地研修しました。

4月23日、「原木市場を知る」「杉の大木に触れ日田林業の歴史を知る」「日田下駄を知る」と題して、産業観光ガイド“ひたりずむの会“メンバー8人で現地研修を行いました。

 

  • AM9:30~ 原木市場の競り市【九州木材市場】

 「さあ、次は直材 20! さあどうぞ!」威勢の良い田中昇吾社長の掛け声が場内に響きます。製材所などの関係者数人が、金額を書いた値札を田中社長に手渡すと、「230番さん、1万2千3百円」。落札の値札だけ手元に残し、ほかの札は破りパッと頭上に放り投げます。 

広さ約4ヘクタールの原木市場内に、丸太の長さ・大きさごとに仕分けられ、整然と山積みされた杉丸太の中を、競り関係者50人ほどの列が進み、次々に杉・桧の丸太が競り落とされていきます。九州木材市場さんではこのような市の風景を毎月2回見ることができます。

田中社長に今回の市の結果を聞くと「丸太の価格が1㎥当たり*杉で2,000円、桧で5,000円程度、これまでの市より高値となっています。この要因は、アメリカが住宅建築ブームで米松などの木材価格が高騰しているためで、さらに船による輸送コストも上昇気味で、これまで外材だった建築材を国内材で賄うため需要が高まっている分、木材価格が上昇しているのです。」との説明でした。「一時的な高値でしょうね。国内の住宅需要は減少している現状で、外材を国内材に当面置き換えただけですから。今後、高値で安定すれば、上がった分を山主さんにお返しできるのですが。」と高値に浮かれることなく、日田林業の将来を冷静に見つめる田中社長でした。

 *1㎥当たり=木材の体積。長さ4m末口φ20㎝の丸太の場合で約6本分

 

値札を受け取る田中省吾社長

 

入札金額を確認し、落札者番号と金額を発表

不落の値札を破り放り投げる。(空の部分を舞う)

 

競り関係者(後方の女性は産業観光ガイド“ひたりずむの会“メンバー)

 

  • AM11:00~ 日田下駄の工場【月隈木履】

 大分日田げた組合の月隈木履さんで下駄の製造工程を見学しました。説明は、2月に放送されたブラタモリで日田下駄の解説役を務めた、同工場の代表 伊藤高広さんです。

この工場では、四角形の杉材の台(下駄枕)を削り・焼き・磨き・塗り・鼻緒を付けて仕上がるまでの10ほどの工程を見学しました。

「僕が生まれる前から動いている、働き者の機械です。」下駄枕を成形する工程は6台の機械が活躍しています。下駄の形・厚さに合わせて機械の刃物を調整し、足裏に接する部分、地面に接する部分の繊細な仕上げを行います。

成形された下駄台は、バーナーで表面を焼き磨きをかけると、年輪模様が浮き出てきます。この工程を「うづくり」と呼び、足裏に木の心地良い感触が伝わる技法です。

月隈木履さんには、工場の隣に直販ショップがあり、一本歯下駄、鉄下駄、左右合わせると円形になる下駄など、様々な形の下駄を履くことができます。

 

伊藤高広さんの説明、下駄枕を成形していく各種機械

 

乾燥のため積み上げられた輪積み

 

  • PM12:30~ 下駄枕を作る【猪熊製材所】

 猪熊製材所さんは、下駄枕(四角形の杉材の台)を製作しています。訪問した時は丁度、同製材所の代表 猪熊英一郎さんが直径70㎝、長さ100㎝程度の丸太をチェンソーで切断していました。下駄枕の材料となる杉丸太は、樹齢70年超えの杉大木の根元部分を山から運び出し、工場でチェンソーと帯鋸製材機で注文サイズに切断していきます。

 「下駄に節目があったりすると割れたりするので無節の部分しか取りません。それと、乾燥してしまうと下駄屋さんでの成形加工がやりにくいので、少し水分を残した状態で出荷します。なぜ根元部分を使うのかは、山に残さない有効利用もありますが、杉材にこだわった日田下駄の履き心地の良さは、この根元部分を使っているからでしょう。」と大きな根株が山積みされた製材所でお話してくれました。

猪熊英一郎さんの説明

根株をチェンソーで切断

 

根株を下駄枕に切断していく帯鋸製材機

出荷前の下駄枕

 

根株の断面(年輪に割って入っているのが節目)

 

  • PM 1:10~ 巨木が横たわる【日田杉資料館】

 日田杉資料館に入ると、木造の建物の大空間が広がり、1階に杉の巨木5本が堂々と横たわっています。日田杉の起源と言われる宮園神社杉(末口径88㎝)をはじめ、大原神社杉(86㎝)、本宮神社杉(72㎝)戸山神社杉(92㎝)、行者杉(東峰村・92㎝)が並び、根元部分の直径は人丈を上回ります。恐る恐る巨木に上がってみるとその大きさが実感できます。

このほか建物の壁には、長さ10mもある日田林業500年の年表、伐採作業や筏流しなどの写真、2階には、鋸・斧などの道具類、作業風景の写真などが展示されています。

 特に、大きな杉丸太を担ぎ足場の悪い丸太の上を運びながら積み上げている女性達の写真にはメンバー一同驚き。機械がない時代の作業の大変さを知り、改めて森林資源が、さらに林業に携わる先人が、日田を支えてきたことを再確認しました。

 

巨木に上がった産業観光ガイド“ひたりりずむ”の会“メンバー

 

大きな杉丸太を丸太の上に積み上げていく女性達