原木市場の初競りがありました。

 日田市産業観光受入施設の日田木材協同組合(1月14日)、九州木材市場(同17日)、日田市森林組合(同18日)で、年頭の初競りが行われました。

 日田地区原木市場協同組合によれば、杉・桧の木材価格は、昨年5月頃から上昇し、6月には材積1立米(りゅうべ)当たりの平均単価は2万円に迫っていましたが、現在は1万5千円台に落ち着いています。ただし、昨年同期と比べ、約2,400円の高値となっています。

 *材積(木材の体積)1立米(りゅうべ)=末口20センチ、長さ4メートルの木材の場合は6.2本分。(*1本当たりの材積=0.20×0.20×4.00=0.16立米)

 

 

競り(セリ)のやり方

 山林で伐採し、トラックで原木市場に運搬されてきた杉・桧の木材は、選木機によって末口直径と長さ別に仕分けされた後、フォークリフトで同サイズごとに“はい積み”され、競りにかけられていきます。

 いよいよ初競りが始まりました。「はい、今日は初競り、買い方の皆さん気張って高値の札を入れてください。まずは杉、20センチの直材。札をどうぞ。」と競り人の威勢の良い掛け声。

競りは、“はい積み”ごとに入札され、買い方は1立米当たりの価格を値札に書き、競り人に渡します。競り人は値札の価格を見比べ、最高価格の値札の買い方番号と価格を発表し、落札後の木材には、“はい積み”ごとに落札した買い方の番号が書き込まれていきます。

 このように、競り人と買い方のやり取りが何度も繰り返され、次々に落札されていきます。

競りが終わった木材は、トラックに積まれ市内外の製材所に運ばれていきます。

 *買い方=木材を買う製材所等の関係者  競り人=原木市場の関係者

 

 

日田木材協同組合

 瀬戸理事長から「一昨年は、住宅建材に占める国産材の割合は41%でしたが、昨年はさらに国産材の需要が高まっているものと思います。初市ですので、高値札を入れていただきますようお願いいたします。」

 横尾買方組合長の威勢の良い日田式の打ち込みで競り市が始まりました。

 法被を着た競り人が「では新年最初。杉、20センチの直材からいきましょう。札をどうぞ。」「1万7千650円で、○○番さんに落札です。」次々と落札されていく中、大分県木材青年部会から出された木材は「2万円で○○番さんに落札です。」の2万円台の声に「オーッ」と拍手が起こる場面もありました。

 この日の初競りに集まった買い方は50人ほどで、「あーっ、また10円の差で落とせんかった。」と嘆く買い方もおり、落札者番号と価格の発表があるたびに、次の“はい積み”の前でいくらの値札を入れるか思案している買い方の姿も多く見られました。

 

 

九州木材市場  

 田中社長が「皆様の期待に応えられるよう、木材の確保を行ってまいります。」とあいさつ。横尾買方組合長の打ち込みで始まりました。この日は優良材市でもあり、百年を超す杉・桧の銘木から、樟、松、銀杏、桜、樫などの雑木まで取り揃えている当市場に、今回は樹齢約250年の杉丸太が競りを待っていました。

 根元側の直径は140センチ、長さ4メートルの堂々たる体格。長い風雨を耐え抜いてきた杉の大木は、今は横たわっていますが、その立ち姿は容易に想像できます。

 250年前に遡れば、江戸時代、日田では日田代官が西国筋郡代に昇格した頃。この頃は「挿し木」による植林が行われ、木材運搬の筏流しは丁度この頃始まっています。

 杉・桧の“はい積み”の競りが終わり、いよいよ大木の競りです。田中社長が大木の上に立ち、「さて、250年の杉。」の掛け声に応え、買い方が値札を田中社長に渡します。受け取った札を見て「もう、ひと越え!」と語気も高まり、無事に落札。買い手が決まった大木は、どんな形に製材されるかわかりませんが、きっといつまでも良い香りを家中に漂わせ、住人を見守ってくれることでしょう。

 

日田市森林組合 

 井上代表理事組合長から「昨年の“ウッドショック”から原木価格が上昇し、現在の価格を維持していくため、今年一年関係者の皆様のご協力をお願いします。」のあいさつがあり、横尾買方組合長の打ち込みで初競りが始まりました。

 競りは、杉の“はい積み”から始まり、終盤は桧の大径木の競りへと移動していきました。直径50センチ~70センチ(樹齢70年程度)の桧が約30本、1本ずつ並べてあります。桧の周りに集まった買い方は、杉の“はい積み”の競りに参加した買い方とは異なります。

 競り人が、「では、1本目。桧、4メートル、直材。では入札をお願いします。」値札を入れたのは2人の買い方。「開札します。4万円で○○番さんに落札です。」「続いて、2本目。桧、4メートル、直材。さあどうぞ。」「開札します。○○番さん、△△番さん、同額です。」すると○○番さんが「どうぞ」と言って△△番さんに譲ります。「では、△△番さんに3万5千円で落札です。」このように次々に落札されていきました。

 この日は、産業観光ボランティアガイド“ひたりずむの会”の皆さんも見学し、木材流通の現状を学んでいました。

 

毎月2回の競り市

 市内には、原木市場が7か所あり、各市場毎月2回の競り市を開催し、年間の取扱量は、平成30年度 約60万立米、令和元年度 約62万立米、同2年度 約55.5万立米となっています。

 1980年(昭和55年)をピークに、住宅用の国産木材は輸入材に押され、需要も価格も低迷していましたが、昨年3月頃からの“ウッドショック”の影響で、需要、価格とも盛り返しています。

 今回の初市を見学して、木造住宅用木材の安定供給のため、原木市場の果たす役割は重要であると強く感じました。